2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『セチュアンの善人』で何が語れるか

【はじめに】 2024年9月のこと,俳優座,田中壮太郎脚色版『セチュアンの善人』を堪能した。3時間の芝居、退屈することなく観劇した。 成立年代がナチスを逃れて亡命した時期で、戦争も回避でき ず、何が善で何が悪なのかハッキリとしない社会情勢の下に書か…

こころの豊かさ,こころの声,そして思考停止の危険性

„Etwas Unpraktisches kann nicht schön sein“(非実用的なものは美しいとは言えない) ウィーンの建築家 Otto Wagner は歴史主義から発して黄金の20年代にあと一歩手が届くところで亡くなったが,彼の作品的成長は最後には近代建築の黎明を告げるものとな…

親の想いは複雑なんだよなぁ。

【贅沢な悩みは本人には切実だ】 あの娘は保育園の時から賢いのは直ぐに分かった。2歳でひらがなが読めた。就学前にローマ字が書けた。それは勉強してではない。ただ興味本位に目にしただけ。音楽的な才能はヤマハに通い始めた当初から歴然としていた。それ…

はにわのきもち

【はじめに】 「はにわ」とは古語から語源を辿れば,埴(はに)土で作った輪に並べて王墓を取り囲む副葬品だ。つまり墓に入れる土器のことである。しかし今,「はにわ」といえば人や動物,家などを象った古代の面白い出土品,考古学の史料だけれどもどこか憎め…

加藤有子氏のBruno Schulzのモノグラムと劇団MODE「さよならシュルツ先生」から読み解けるもの

10月21日に観劇した劇団Modeの「さよならシュルツ先生」の事前知識のために加藤有子の博論『ブルーノ・シュルツ』を読んだ。Bruno Schulz(1892-1942) はポーランドの画家であり小説家だった人物だ。自分はザッヘル・マゾッホの作品に似たものを絵画の世界で…