Cahier de lecture : Georges Bataille 『エロスの涙』,『エロティシズム』への批判

Bataille のエロティシズム研究は人類の誕生以来どのように性慾を発展させ、遺してきたかを体系的に語ろうという試みに思える。

しかし彼にとっては性慾発露の対象は男性であり、そこで語られる激しい熱情も男性が抱く女性への欲情である事を不文律に表現している。デュオニソス的狂気・宗教的供儀と通じる変態性欲としてサディズムが語られるが、他の要素、ーーレズビアントランスジェンダー的嗜好、フェティシズムマゾヒズム等ーーについては言及がない。

執筆当時の時代思潮を考えれば現在の Diversität は想像だにしない百花繚乱のセクシャリティーだと言うのは容易に予想できるが、少なくとも古代ギリシャから明確に、盛大に行われていた同性愛について一章を割かないのは合点がいかない。恐らく Bataille 自身興味のないエロティシズム喚起の対象だったのかも知れない。

この事は Didier Eribon の著作でも指摘されている。