普通が普通でない盲点を暴く障害者の復讐

市川沙央『ハンチバック』 この小説は当たり前の視点を徹底的に批判しこき下ろす作者の、社会に対する挑戦が読み取れる。 本人の総じての主張は、読書界(出版界)の障害者対応の改善。だが内容的には性愛の実現と虚構で健常者から金を稼ぐ復讐的快感。他人へ…

Cahier de lecture : Georges Bataille 『エロスの涙』,『エロティシズム』への批判

Bataille のエロティシズム研究は人類の誕生以来どのように性慾を発展させ、遺してきたかを体系的に語ろうという試みに思える。 しかし彼にとっては性慾発露の対象は男性であり、そこで語られる激しい熱情も男性が抱く女性への欲情である事を不文律に表現し…

倒錯的デカダンス,実は純愛のカタルシス

映画「聖なる蝶 赤い部屋」(窪田将治 2021) および「愛の嵐」(Il Portiere di notte, Liliana Cavani 1974) がなぜデカダンスを装いながら,本質は厨二病的で純愛のカタルシスを表現していると思えるのか。 愛慾は一人の欲望で成立するが、愛は互いの情熱と…

Über die Semantik der Darstellungen (表現の意味論)

0.はじめに 私たちは何事も受容する際に意味づけをするのが一般的です。例えば夏の季節、家人が網戸になっていた部屋の窓を閉め始めるのを目にした時、(あ、クーラーを入れるんだな)と理解し、(自然の換気では家人には暑すぎたのだ)と解釈するでしょう。…

口語と文芸についてつれづれに…

1.「ら辺」と「形容詞語幹+み」について 以下の例文を読んで違和感を感じますか? 付き合って初めて(彼女が)家に来たときに、僕の部屋が、お金なかったんでめっちゃ狭かったんですよ。座るとことかないんで、ベッドに座るじゃないですか。(彼女が)枕ら…

昨今の技術革新と我々人類の思索に関する付き合い方を模索する考察

知識を収集して紹介することと知識を土台にして論じることは全く違う行為である。 Jemandem erlerntes Wissen vorzustellen ist ganz und gar anders als mit erlerntem Wissen über etwas zu denken. 情報は思考判断の材料であって知的活動の中心ではない。…

沖澤のどかの真面目な表現力に圧倒される

14. Mai 2023 im großen Konzerthaus von Tokyo Geijutsu Gekijou, Ikebukuro 1. Elgar Violinenkonzert 2. Wagner Tristan und Isolde Vorspiel zum 1.Aufzug & R.Strauss Tod und Verklärung (ohne Unterbrechung) Tristan冒頭の,まるで幾重にも練り上げ…