どこまでも共生を求め過ぎて歪曲する人々について

日本の「道」の文化、茶道、花道、剣道、柔道などは可視的には技術を磨く鍛錬と稽古だが、それだけでは不十分で、精神の鍛錬も要求される。 つまり技術が秀逸で素晴らしい生花、感心する程上手い茶の出来具合、小気味良い一本や敏捷で素早い小手も、それは技…

テクスト批判と作品解釈について(執筆中)

Textkritikを気にする文学愛好家はもはやディレッタントではなく、本物の文学研究に足を突っ込んだ者だと言える。 例えば夏目漱石の作品を読むのに新潮文庫や岩波文庫、角川文庫で読むのは普通だろう。まさかここで岩波書店の漱石全集を買ったり借り出す人は…

Yuval Sharon の魔笛が語りかける子ども目線とは?

am 30. Dezember 2023 Deutsche Staatsoper Unter den Linden の『魔笛』を堪能した。 演出はアメリカ人ながらウィーンやバイロイトでも演出経験のある1979年生まれの弱冠44歳の Yuval Sharon。 既に評論には書かれているが、この演出は日本のマンガ文化をか…

Silvesterkonzert 2023 in der Philharmonie, Berlin

Silvester 初日(12月29日)は最高の出来だった。 第1曲目のタンホイザー序曲は音のレンジの幅を巧妙に制御した演奏。pから始まって徐々にffに広がっていく音の幅。 メインプログラムのワルキューレ第1幕はヨーナス・カウフマンはもちろんのこと、ツェッペン…

Hans Werner Henze "Gogo no Eikou"(Das verratene Meer) と三島由紀夫の『午後の曳航』

0.はじめに Hans Werner Henze は20世紀〜21世紀にかけてコンテンポラリー作曲家として名を馳せている。1980年代後半に彼は三島由紀夫『午後の曳航』を題材にオペラを作曲した。今回,このオペラの改訂版,ドイツ語版の日本初演が2023年11月23日,日比谷の…

Mode の記号化について

Semiotics的観点からは凡ゆる事物が実は実体のないよう以外に記号化された意味を持っている可能性がある事を示唆できる。 これは永続的、限定的問わず言える。 そこで気がついたのだが男性の Mode (ファッションにおける流行)である。 昔、アカデミック・ラ…

好意・恋愛・性欲の関係と社会契約について

好意と恋愛感情と性愛の欲望は同一のものだろうか。 まず何故か理由は分からぬが好意が首を擡げる。そして好意が募ることで恋愛感情が芽生える。しかし恋愛は片想いでは成就しない。そして片想いの段階では肉欲の欲望はむらむらとは沸いて来ない。 性愛を意…

遺灰は語る(LEONORA ADDIO)

moviola.jp 全編を通して感じたことは,イタリア人の精神文化の根底には良くも悪しくもカトリック教会の教えが厳然と存在し続けていること。 遺灰を載せた飛行機だとわかって全員降りてしまうのは迷信深い人々を意味するが,迷信と荘厳はカトリック精神の中…

バッカスの踊る4番と爆発する世界の調和

2023年9月24日 サントリーホール 14:00〜 沖澤のどか 京都市交響楽団 常任指揮者就任披露演奏会 Beethoven Symphonie Nr.4 op.60 Connesson "Trilogie cosmique" pour orchstre 沖澤のどか京響常任指揮者就任披露コンサート,東京では1日のみ。この1日にわ…

雑纂(Aphorismen Nr.1)

* 最近Youtubeの広告に,「人助けビジネス」とか,発達障害的な特徴を挙げ連ねて,「そういう人こそができる,人に寄り添うビジネス」,「お金だけじゃない,人を幸せにする満足感の持てるビジネス」,「経験の豊かな人生を送ったあなたであれば出来るビジ…

Das Wesen von der Eifersucht

Die Eifersucht ist der Beweis, noch geliebt zu sein. Die Liebe ist der Versuch, den freien Andren bekommen zu wollen. Den Denselben wie ein Ding bekommen zu wollen, aber als ein Andrer sein zu wollen. Dieser Wunsch ist eigentlich widersprü…

普通が普通でない盲点を暴く障害者の復讐

市川沙央『ハンチバック』 この小説は当たり前の視点を徹底的に批判しこき下ろす作者の、社会に対する挑戦が読み取れる。 本人の総じての主張は、読書界(出版界)の障害者対応の改善。だが内容的には性愛の実現と虚構で健常者から金を稼ぐ復讐的快感。他人へ…

Cahier de lecture : Georges Bataille 『エロスの涙』,『エロティシズム』への批判

Bataille のエロティシズム研究は人類の誕生以来どのように性慾を発展させ、遺してきたかを体系的に語ろうという試みに思える。 しかし彼にとっては性慾発露の対象は男性であり、そこで語られる激しい熱情も男性が抱く女性への欲情である事を不文律に表現し…

倒錯的デカダンス,実は純愛のカタルシス

映画「聖なる蝶 赤い部屋」(窪田将治 2021) および「愛の嵐」(Il Portiere di notte, Liliana Cavani 1974) がなぜデカダンスを装いながら,本質は厨二病的で純愛のカタルシスを表現していると思えるのか。 愛慾は一人の欲望で成立するが、愛は互いの情熱と…

Über die Semantik der Darstellungen (表現の意味論)

0.はじめに 私たちは何事も受容する際に意味づけをするのが一般的です。例えば夏の季節、家人が網戸になっていた部屋の窓を閉め始めるのを目にした時、(あ、クーラーを入れるんだな)と理解し、(自然の換気では家人には暑すぎたのだ)と解釈するでしょう。…

口語と文芸についてつれづれに…

1.「ら辺」と「形容詞語幹+み」について 以下の例文を読んで違和感を感じますか? 付き合って初めて(彼女が)家に来たときに、僕の部屋が、お金なかったんでめっちゃ狭かったんですよ。座るとことかないんで、ベッドに座るじゃないですか。(彼女が)枕ら…

昨今の技術革新と我々人類の思索に関する付き合い方を模索する考察

知識を収集して紹介することと知識を土台にして論じることは全く違う行為である。 Jemandem erlerntes Wissen vorzustellen ist ganz und gar anders als mit erlerntem Wissen über etwas zu denken. 情報は思考判断の材料であって知的活動の中心ではない。…

沖澤のどかの真面目な表現力に圧倒される

14. Mai 2023 im großen Konzerthaus von Tokyo Geijutsu Gekijou, Ikebukuro 1. Elgar Violinenkonzert 2. Wagner Tristan und Isolde Vorspiel zum 1.Aufzug & R.Strauss Tod und Verklärung (ohne Unterbrechung) Tristan冒頭の,まるで幾重にも練り上げ…